「知」の結集 ゆびすいコラム

2018.09.28

2年前の納税額から還付!?災害損失欠損金の活用法

2018年は豪雨、台風、地震と、災害が相次ぎました。被災された皆様が一日でも早く平穏な生活を取り戻せるよう、心からお祈りしております。
 
これら災害では、多くの方が多大な損失を被り、今もなお不安な日々をお過ごしの方もおられるかと思います。今回は、法人様の被った災害損失から還付を受けるための制度「災害損失欠損金の繰戻し還付」についてご紹介します。
 
○制度の概要
この制度は、災害により、災害があった日から同日以後1年以内に終了する事業年度等において生じた欠損金額のうち、災害損失欠損金額がある場合に、その事業年度等開始の日前2年(白色申告である場合は1年)以内に開始した事業年度の法人税額のうち一定金額の還付を受けることができるというものです。青色申告をしている場合のみに適用できる通常の欠損金の繰戻し還付制度もありますが、この制度は解散等事業年度や中小企業者等以外は適用が停止され、さらに還付はその欠損金が生じた事業年度開始の日前1年以内に開始した事業年度の法人税額に限られています。したがって、大企業の場合、前期には法人税額がなく前々期に法人税額が発生している場合、白色申告の場合などには、通常の欠損金の繰戻し還付制度は適用できず、災害損失欠損金の繰戻し還付制度を活用することで還付を受けることができます。
 
○災害損失欠損金額とは
ここで重要なのが災害損失欠損金額の範囲です。災害損失欠損金額は、その事業年度の欠損金額のうち、災害(震災、風水害等)により棚卸資産、固定資産及び繰延資産について生じた次の①~③の合計額(保険金、損害賠償金等により補填されるものを除きます)に達するまでの金額をいいます。
① 災害により資産が滅失・損壊したこと、又は災害による価値の減少に伴い、その資産の帳簿価額を減額したことにより生じた損失の額(その資産の取壊し又は除去の費用その他の付随費用に係る損失の額が含まれます)
② 災害によりその資産が損壊し、又はその価値が減少した場合その他災害によりその資産を事業の用に供することが困難となった場合において、その災害のやんだ日の翌日から1年を経過した日の前日までに支出する次の費用に係る損失の額
 ・災害により生じた土砂その他の障害物を除去するための費用
 ・その資産の原状回復のための修繕費
 ・その資産の損壊又は価値の減少を防止するための費用
③ 災害によりその資産につき現に被害が生じ、又はまさに被害が生ずるおそれがあると見込まれる場合において、その資産に係る被害の拡大又は発生を防止するため緊急に必要な措置を講ずるための費用に係る損失の額
 
○還付請求
この繰戻し還付では、その欠損金が生じた事業年度(欠損事業年度)開始の日前2年以内に開始したいずれかの事業年度(還付所得事業年度)の法人税額のうち、次により計算された金額が還付されます。
 還付所得事業年度の法人税額×(欠損事業年度の災害損失欠損金額※/還付所得事業年度の所得金額)
 ※分母の金額が限度
この適用を受けるためには、還付所得事業年度から欠損事業年度まで連続して確定申告書等を提出していることのほか、欠損事業年度の確定申告書と同時に、災害の詳細を記載した「欠損金の繰戻しによる還付請求書」を提出しなければなりません。
 
○最後に
この制度は、2017年度税制改正において災害が頻発する近年における被災者等の不安を和らげる趣旨から常設化されました。先述のとおり、通常の欠損金の繰戻し還付制度のように適用対象法人が制限されず、還付対象となる期間も長くなっています。事業の復旧に資金が必要なこの際に一度ご検討されてみてはいかがでしょうか。このコラムが災害に遭われた法人様の資金繰りの一助となれば幸いです。
 
大元 誠児
 
 
税 金