「知」の結集 ゆびすいコラム

2019.05.07

もうひとつの働き方改革(同一労働同一賃金)

 働き方改革という言葉もすっかり世間に浸透したことと思います。長時間労働を防ぐ目的で、年次有給休暇のうち5日を消化させる義務や時間外労働の上限規制が主にクローズアップされています。

 実はこの働き方改革にはもうひとつの目玉があります。それは「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」いわゆる「同一労働同一賃金」と呼ばれるものです。

 長時間労働の是正に関する法律改正については2019年4月から施行されていますが、同一労働同一賃金については、現在のパートタイム労働法(短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律)が、短時間・有期雇用労働法(短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律)と名称を変え2020年4月からの施行を控えています(中小企業ついては1年遅れ)。

 この短時間・有期雇用労働法の主な改正は、①同一企業内における正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差を解消するための規定の整備、②労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、③行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続の整備等が主な内容となります。

 小難しい文言を並べてしまいましたが、正規と非正規とを仕事の内容等で区別する合理的な理由がない限りは、賃金や福利厚生といった点において、同一に扱ってあげてくださいといったことが改正の内容になります。

 近頃の幼稚園・保育園では、無茶な長時間労働や有給休暇を取得できないといった問題を聞くことは少なくなりました。むしろ幼稚園・保育園業界にとっては、この同一労働・同一賃金の問題の方が根深いと感じます。

 例えば、賞与や退職金については正規のみに支給し非正規には支給しないと定める就業規則が圧倒的に多いと言わざるを得ないですし、手当についても正規には支給するが非正規には支給しないとする法人も多く感じます。今回の改正により、こういった取り扱いに待ったがかかり、正規と非正規とを賃金や福利厚生において区別する理由が求められることになり、その説明も義務化されます。

 但し、まったく同じ待遇にすることまで求められるわけではありません。現在のパートタイム労働法では、①業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度、②職務の内容及び配置の変更の範囲、③その他の事情の3要素を考慮して不合理と認められるものであってはならないとするいわゆる均衡待遇規定がありますが、今回の改正では待遇差が不合理と認められるか否かの判断は、個々の待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情を考慮して判断されるべき旨が明確化されました。

 例えば、基本給や賞与は担任を持つ持たないといった責任により差を設けることは合理的な要素に傾くが、通勤手当や給食費補助といった手当は通勤や食事そのものを目的とするものであり正規と非正規において区別することは合理的ではないといったように、各種待遇ごとにその趣旨を考慮のうえ同一の待遇にするか差を設けるかを決定する必要が出てきます。

 給与の支給項目や福利厚生的な要素は、急に変更できるものではありません。法の施行はまだ先のことですが、今から自園の正規と非正規の待遇差をうまく説明できるかどうか見直してみてはいかがでしょうか。

社労事業部 浅香善行

教育・福祉事業