「知」の結集 ゆびすいコラム

2019.11.29

学校法人会計基準の「基本金」

学校法人会計で分かりにくいのが「基本金」。
基本的な考え方をお伝えしようと思います。
 
 
   学校法人は「学校」を設置します。
   「学校」は教育機関で、「学校教育」というサービスを「学生」に提供します。 
   学生に「学校教育」を提供しようとしたら、
   「場所」が必要です。 土地が要ります。
   青空でも良いですが、雨が降ったら困ります。 なので建物も必要です。
   立ったままでは疲れますし、字も書けません。 なので机や椅子も欲しいです。
 
 
   そこで会計基準は考えました。
 
   「固定資産(有形固定資産)」は学校教育に欠かせない基本的な財産だと。
 
   基本的な財産(基本財産)を保有することが学校教育の提供の基本だとし、基本
   財産が増加することが更なる教育の質の向上につながるのではないかとも考えま
   した。
 
   よって、会計基準では、固定資産(有形固定資産)を基本財産(基本金)とした
   のです。
 
 
基本金の種類
   (1)第一号基本金
   学校法人が設立当初に取得した固定資産で教育の用に供されるものの価額または
   新たな学校の設置もしくは既設の学校の規模の拡大もしくは教育の充実向上のた
   めに取得した固定資産の価額
 
   つまり、有形固定資産の増加の額です。
 
   (2)第二号基本金
   学校法人が新たな学校の設置又は既設の学校の規模の拡大もしくは教育の充実向
   上のために将来取得する固定資産の取得にあてる金銭その他の資産の額
 
   第一号基本金と似ていますが、第一号基本金の取得原資となることが計画されて
   いるものの指します。なので計算書類にも「第2号基本金の組入れに係る計画表」
   の作成が求められます。
   これは、先行組入れの計画的、段階的な実行を明らかにしようとするもので、
   具体的には、園舎の建替えなど「高額な固定資産を取得」しようとしたときに、
   取得年度に組入れをすると、事業活動収支のバランスが崩れます。このような
   事が無いよう、収支の均衡を図るという観点からも第二号基本金は考えられて
   います。  なお、第二号基本金は強制されるものでは無く、法人の意思により
   決定されます。
   第二号基本金に設定した固定資産の取得が完了したら第一号基本金へと振替ます。
 
 
   「取得にあてる金銭その他の資産」と言うのは第一号基本金の取得にために内部
   調達された金銭等のほか、特別寄付金や施設整備補助金等を指し、これは年度を
   超えて高額な外部収入が見込まれることから第一号基本金と区別をしたのです。
 
   (3)第三号基本金
   基金として継続的に保持し、かつ運用する金銭その他の資産の額
 
   文字通り「基金」です。 具体的には、寄附者の意思や学校法人独自で設定した
   奨学基金、研究基金、海外交流基金などがあります。
   基金が基本金とされたのは、寄附者や学校法人の意思によって継続的に特定の事
   業目的のために基金の運用果実をもって運用されなければならないからです。
 
   ※主に大学法人で設定され、幼稚園法人など規模の大きくない法人では設定があ
   りません。
 
   (4)第四号基本金
   恒常的に保持すべき資金として別に文部科学大臣の定める額
 
   運転資金を常時維持しておかないと運営が出来ませんからその為のお金(資金)
   を基本金として設定しておきなさいという趣旨です。
   文部科学大臣の定める額と言うのは、
 
   前年度の事業活動収支計算における
   ① 教育活動収支の人件費(退職給与引当金繰入額及び退職金を除く。)
   ② 教育活動収支の教育研究経費(減価償却額を除く。)
   ③ 教育活動収支の管理経費(減価償却額を除く。)
   ④ 教育活動外収支の借入金等利息
   の決算額の合計を12で除した額(100万円未満の端数があるときは、
   その端数金額を切り捨てることができる。)とします(以下、計算額といいます。)。
   これは、学校法人の経常的な支出の約1ヶ月分を第4号基本金として保持すべきとい
   うことを意味しています。なお、上記により計算した額が前年度の保持すべき資金の
   額を下回るときは、その差額を取崩しの対象とします。
 
   当年度の計算額が前年度の第4号基本金の額の80%以上100%未満の場合は、第4号
   基本金の取崩しは不要であり、また、100%超120%以内の場合には第4号基本金の組
   入れをすることも前年度のままとすることも可能です。したがって、前年度の第4号
   基本金の額の80%未満となった場合には必ず取崩し、120%超となった場合には必ず
   組入れを行います。
 
   なお、知事所轄法人の場合、第四号基本金の組入れは任意とされています。
   ただし、一度、設定した第四号基本金を無くすことはできません。
 
      大阪事業部   大道厚生
 
 
教育・福祉事業