「知」の結集 ゆびすいコラム

2020.06.02

社会福祉法人の決算書で見るべきポイントとは

会計担当者の皆様、決算業務大変お疲れ様でした。今年はコロナウイルスの影響もあり、まだ完了されていない法人様もいらっしゃるかと思いますが、今回は社会福祉法人の決算書のうち、資金収支計算書におけるポイントを解説したいと思います。
 
 資金収支計算書は社会福祉法人の決算書の中では特に重要視されます。1年間の資金の動きをまとめた計算書であり、予算対比の様式となっております。1年間の予算がどの程度執行されたかをみることができます。法人運営の前提として、予算に基づき運営をしていくことが求められていますので、予算超過がある科目については行政監査での指導ポイントとなり得ます。もし大科目上(人件費支出や事業費支出など)超過がある場合は、少し多めの予算にしておく、ということをご検討いただくとよいかと思います。
 資金収支計算書上で経営状態を把握する部分は「当期資金収支差額」です。1年間の事業活動収支、施設整備収支、その他収支をすべて含めた資金の増減を意味します。ちなみに、社会福祉法人会計では「資金」とは現金や預金だけではなく、1年以内に現金化される「流動資産」と「流動負債」も含んだものとなります。特にこの部分がマイナスである場合は、なぜマイナスになっているかを把握する必要があります。
 「事業活動資金収支差額」がマイナスであれば、早急に支出の見直しが必要です。近年では、人材紹介手数料が含まれる事務費支出が収支を圧迫しているケースも散見されます。
 「施設整備等による収支」では固定資産の取得やそれに伴う補助金収入、借入金の収入や支出が確認できます。開所して間もない施設がある法人様ですと施設整備等支出が大きくなる傾向があります。
 「その他の活動による収支」では「積立資産支出」がポイントです。人件費積立資産や修繕資産など将来のための目的をもった積立も支出に含まれることとなっています。「当期資金収支差額」+「積立資産支出」で見ていただくと、1年間での資金の増減が確認できます。
 
 その他分析観点としては、過去と現在との比較、法人内部での拠点毎の比較、他法人との比較などがあります。他法人との比較に関しては、WAM(福祉医療機構)や各種団体、また弊社ゆびすいニュースでも財務分析情報を発信しておりますのでご活用いただければと思います。今年1年間の運営がよかったのか、悪かったのかの判断は様々な要因があるため、決算書の数字をだけでは見えてこない部分もあるかと思います。決算書の分析は経営判断の一参考指標として活用していただくとより良い法人運営につながるのではと思います。
 各種補助金の実績報告、理事会・評議員会、WAM(福祉医療機構)の電子開示システム等6月も忙しい日々が続くことかと思いますのでくれぐれもご自愛ください。
 
東京OF 藤原智幸