「知」の結集 ゆびすいコラム

2020.07.13

学校法人における「リース取引」

今回のゆびすいコラムでは、学校法人におけるリース取引についてお話したいと思います。

学校法人では近年、スクールバスをはじめ、印刷機や教育研究用機器備品など
リース契約における取扱資産が拡大し、取引量が増加している傾向にあります。
これは、一括で購入する際と比べて初期費用を大きく抑えられることにより、
資金繰りが厳しいタイミングでも購入可能となる点(借入金で買って分割返済をしているイメージ)、
実務上、資産計上を要さない賃貸借処理が多く、固定資産管理などの事務負担が少ない点、
などの理由が考えられます。
 
●リース取引の種類について
リース取引は大きくわけて2種類に分かれます。
 ①ファイナンス・リース取引
  まず、以下の2つの条件を満たす場合、「ファイナンス・リース取引」となります。
   ・解約不能    
     →リース期間中に契約を解除できないリース取引またはこれに準ずるリース取引
   ・フルペイアウト 
     →借手がリース物件の経済的利益を実質的に享受し、 物件の使用に伴うコストを
      実質的に負担するリース取引
 
 このうち、次のいずれかの条件を満たす場合、「所有権移転ファイナンス・リース取
 引」と呼びます。実質的には分割払いと同じようなもので、返済後に資産の所有権
 が借手に移ります。
 ・譲渡条件付きリース
   →リース契約上、リース期間終了後又はリース期間の中途で、リース物件の所有権
    が借手に移転することとされているもの
  ・割安購入選択権付きリース
   →リース契約上、借手に対して、リース期間終了後又はリース期間の中途での割安
    購入選択権(名目的価額又はその行使時点のリース物件の価額に比して著しく有
    利な価額で買い取る権利)が与えられており、その行使が確実に予想されるもの
  ・特別仕様物件のリース
    →リース物件が借手の用途等に合わせた特別な仕様によるものであって、当該リー
     ス物件の返還後、貸手が第三者に再リースし、又は売却することが困難であるた
     め、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなもの
 一方、ファイナンス・リース取引のうち、所有権移転ファイナンス・リース取引以外
 のものを「所有権移転外ファイナンス・リース取引」と呼びます。こちらも実質的には分
 割払いと同じですが、完済後に所有権が借り手に移りません。多くの場合、同資産で再リ
 ースとして契約を続けるか、新たな資産でリース契約を結ぶこととなります。
 
 ②オペレーティングリース取引
  リース取引のうち、「ファイナンス・リース取引」以外のものをいいます。
  ファイナンス・リース取引とは異なり、資産を借りているだけの状態となります。
 
●リース取引の会計処理について
「ファイナンス・リース取引」は、原則として売買取引(=資産計上)となりますが、
例外として、次のいずれかに該当する場合には、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うことができます。
  ①リース料総額が学校法人の採用する固定資産計上基準額未満のもの
    (リース物件が少額重要資産の場合を除く。)
  ②リース期間が1年以内のもの
  ③リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のもの
    (ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引に限る。)
実務上では、賃貸借取引として会計処理を行うケースが大半を占めています。
一方、「オペレーティング・リース取引」は、全て賃貸借取引(=資産計上しない)となります。
 
●今後の会計処理について
 企業会計においては、2019年1月1日以後に開始した事業年度より、国際財務報告基準
IFRS16号による新リース基準が適用となっております。大きな改正内容としては、ファイ
ナンス・リースとオペレーティング・リースという区分がなくなり、原則として売買取引(=
資産計上)となる点です。例外として、少額リース取引や短期リース取引については、
引き続き賃貸借処理(=資産計上しない)を行ってもよいとされています。
学校法人会計においても、ファイナンス・リース取引については、通常の売買取引での会計処
理を行うこととし、オペレーティング・リース取引における賃貸借取引での会計処理を廃止する
など、企業会計との統一を図る方向に進んでいくと予想されます。
 
リース契約の際には、会計処理についてもお含みおきの上、ご検討いただけると幸いです。
今後、改正等がございましたら、ご説明出来ればと思います。
 
 
東京OF 山本晃太郎
 
 
公益・福祉事業