「知」の結集 ゆびすいコラム

2020.09.18

MS法人で居住用マンションを建てても消費税が還付されない!?

ゆびすいの医療専門部では、毎月、事例研究をしていますが、そのなかでも議題によくあがるのはMS法人の活用方法です。
MS法人は、昔に比べると消費税が増税されたことに伴って、メリットがなくなりつつあります。そんな中、追い打ちをかけるように令和2年度の税制改正がありました。それは、「居住用賃貸建物の取得等に係る消費税の仕入税額控除の見直し」です。
 
1、なぜ見直しされたのか?
 改正前は、いわゆる「金・地金による消費税還付スキーム」が横行していました。
このスキームは、一括比例配分方式で計算している法人が金・地金の売買を繰り返すことで還付を受けようとする課税期間の課税売上割合を高くした結果、仕入税額控除の金額を増やし、還付額を増加させていました。実際、金・地金の売買は、本来業務の不動産賃貸業とは関係がなく、課税売上割合の数字の操作のためだけに取引されるという不自然さがありました。このスキームにストップをかけたのが令和2年度税制改正です。
 
2、改正内容
(1)内容
 ①高額特定資産(取得価額が1,000万円以上)に該当する居住用賃貸建物に係る課税仕入れについては、仕入税額控除ができなくなります。
 ②課税仕入れの日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの間に住宅の貸付以外の用途に変更した場合または譲渡した場合には、一定の金額を、変更または譲渡した日の属する課税期間の仕入税額控除に加算します。
 ③ただし、住宅の貸付の用に供しないことが明らかな部分(店舗用や事務所用)については、仕入税額控除が認められます。
(2)施行開始時期
令和2年10月1日以後に居住用賃貸建物の課税仕入れを行ったときから適用されます。ただし、令和2年3月31日以前に契約が締結され、引き渡しの日が同年10月1日以後である場合は適用されません。
 
3、MS法人の活用方法
 以上をもって、令和2年10月1日以後に居住用マンションの課税仕入れを行ったとしても、住宅の貸付部分は仕入税額控除が行えなくなりました。ただし、居住以外の用途(店舗や事務所用)として貸付ける部分は仕入税額控除ができます。今後のMS法人の活用方法としては、マンションではなく、店舗が入るような賃貸建物を建設する不動産投資が増えていくことが予想されます。
 
医療専門部
堺OF 吉村 隆宏
 
 
医 業