コロナ禍で金融業界を中心に印鑑レス化が進んでいます。これは、先日新たに預金口座を開設した際、私自身も身をもって実感したことです。
開設までが早く感じ、とても楽でした!
今回は、そんな印鑑レス化の概要と税務に与える影響”印紙税”について考えていきたいと思います。
新型コロナウイルスの感染拡大でテレワークが叫ばれる中、浮き彫りになった問題。それが日本独自のハンコ文化です。日本においては、稟議書や社内決済文書、契約書など多岐にわたる文書について、紙面に押印する慣習が広く根付いており、テレワークの障害となっていました。
この問題については内閣府、法務省などについても問題視され、6月に「ハンコ不要」の見解が表明されたところです。
押印は証明の手段としては有効ですが、元々法律上では当事者同士の合意があれば契約は成立するため、文書を作成する必要も押印する必要もありません。しかし、契約の成立に疑義が生じないように、その経緯が証明できるようにする必要があり、その手段として以下の方法が例示されています。
■契約の成立の真正を証明する手段の例示―――――――――――――――――
①継続的な取引関係がある場合
取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の保存
②新規に取引関係に入る場合
契約締結前段階での本人確認情報の記録・保存
③電子署名や電子認証サービスの活用
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上記のような手段が整っているのであれば、電子契約でもなんら問題はありません。
そして、冒頭でもお伝えしたように電子契約は印紙税にも大きく影響するのです。
印紙税は紙面の文書に課される税金であるため、紙面で保存しない電子契約に課税されることはありません。
業種によって印紙税の多寡は異なりますが、すべての文書を電子化すればその影響は大きなものになります。
例えば、年商12億円の建設会社が請負金額6,000万円×20件の工事契約すべてを電子契約にした場合をみてみましょう。
請負金額6,000万円の工事契約書を紙面で作成した場合、現行では3万円(2022年3月31日までの軽減措置。同年4月1日以後作成分については6万円。)の印紙を貼らなくてはなりません。これが印紙税です。
これらの契約書を電子契約にするだけで、年間で3万円×20件=60万円の負担がなくなることになります。
契約書は売上に係るものだけではないので、この建設会社の場合さらに効果が見込めますね。
慣れ親しんでいるハンコ文化。 急に不要と言われても、押印しないと不安という方もいらっしゃると思いますが、
テレワークの推進、印紙税の節税には有効な手段ですので一度検討してみてはいかがでしょうか。
大元 誠児