「知」の結集 ゆびすいコラム

2020.10.08

医療機関における窓口未収金の発生防止ポイント

1.はじめに
 窓口未収金発生の要因は、所持金不足や意図的な不払い、保険資格喪失後の受診や会計時の誤計算など、様々な理由があります。一方で発生した窓口未収金を回収するには、多大な労力を要するだけでなく、回収自体が困難なケースも少なくありません。
 つまり、未収金対策は回収率の向上よりも発生防止策の方が重要です。今回は、具体的にどのような方法が効果的であるか、ポイントを3つご説明したいと思います。
 
2.防止策のポイント
(1)保険証の確認
 医療保険の受給資格の有無を確認するために、患者に保険証の提示を求めることは最も基本的であり、かつ重要な予防策です。
 初診時や定期通院患者の保険証の確認は、いずれの医療機関においても取り組まれている対応だと思われます。しかし、患者が保険証の持参を忘れるなど結果的に確認を怠ってしまうケースも珍しくありません。
 こうした状況を含め、一定期間保険証の確認ができない場合は、医療費の全額をいったん支払っていただくことも検討する必要があります。
 
【具体例(保険証の取り扱いに関する院内ルール)】
①毎月初診時に保険証の提示を求め、コピー※をとって保管
 ※個人情報に該当するため、患者から適切な同意を得ておくことが必要
②連続して3ヶ月以上保険証の確認できない患者には、いったん医療費全額の支払いを求める
③②の際、請求総額に満たなくても最低5千円~1万円は預かる
④保険証を確認後、保険給付分を払い戻す
 
(2)医療費の事前説明
 患者は、医療サービスの提供を受けた後で医療費の総額を知らされることが多いため、診療内容に納得がいかず支払いを拒否するケースがあります。また、不用意に概算を伝えることも支払い時のトラブルを招く可能性があるため、慎重になる必要があります。
 そこで、患者負担金が特に高額となる検査項目別や手術別に一覧表を作成し、事前に患者へ説明することが有効です。また、高額療養費制度を利用するなど、多額の医療費であっても支払い方法を医療機関と患者双方で模索し、未収金発生の予防に努めることが重要です。
 
(3)クレジットカード、電子マネー等による支払い方式の導入
 ■患者側のメリット
  ・現金の持ち合わせがなくても受診できる
  ・ポイントが貯まる
 ■医療機関側のメリット
  ・窓口未収金の発生を抑える
  ・会計待ち時間の短縮、業務効率化
  ・他の医療機関との差別化
 一方で、医療機関のデメリットとしては利用に際して手数料が掛かることです。手数料を3%とし保険の窓口負担を3割とした場合、実際は売上全体の0.9%の負担になります。
 
3.最後に
 窓口未収金の発生要因には、未然に防ぐことができるものだけではありません。しかし、少額の未収金であっても、積み重なると経営面へ影響してきます。地域性や規模に応じて対応方法も異なると思いますが、お困りの際はお気軽にご相談ください。
 
医療専門部 大阪OF 山下裕太
 
 
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