「知」の結集 ゆびすいコラム

2021.10.01

持分なし医療法人の交際費には注意

医療法人が交際費を払った場合、法人税の損金となるかどうか、気にされた事はありますか?
ほとんどの方が意識せずに損金になると思って、交際費を使っていると思います。
今回は、医療法人が気を付けるべき、法人税法上の交際費の取扱いをご紹介します。
 
1、交際費の損金不算入
 まず法人税の交際費は、原則損金不算入の扱いです。ただし、資本金または出資金が1億円以下の法人は、令和3年時点で損金限度額が800万円と制限されています。つまり、交際費は800万円までは全額損金になるが、800万円を超えると損金にならないという事になります。
 
2、持分あり医療法人の場合
 持分あり医療法人が、交際費を支払った場合、どうなるでしょう。この場合、出資金の額に注目します。
 自院の出資金が1億円以下の法人の交際費は、800万円まで損金になります。
 
3、持分なし医療法人の場合
 持分なし医療法人の特徴は、出資金が0円として取り扱われる点にあります。そしたら、持分なし医療法人は、出資金が0円だから、交際費が800万円まで損金算入されるのかというと、必ずしもそうではありません。
 持分なし医療法人の税法上の出資金は、以下の算定式で計算します。
 
「{簿価総資産-簿価総負債(-当期利益or+当期損失)×60%}」
 
この計算式を当てはめた結果、1億円を超えると交際費は、原則、全額損金不算入になります。
ただし、令和3年時点では、特例で飲食費の50%が損金になる取扱いがありますので、交際費の一部が損金として認められます。
 
 
以上のように、持分なし医療法人は、年数を重ねると交際費が全額損金不算入になる可能性があります。
実務上は、役員報酬を多めに取るなどして、調整する事も可能です。
 
医療専門部 吉村 隆宏
 
 
医 業