「知」の結集 ゆびすいコラム

2024.06.14

「保育所等訪問支援事業」について

 「保育所等訪問支援事業」は、児童福祉法第6条の2の2第5項に規定される第2種社会福祉事業です。
 
 当該制度は“障害児支援に関する相当の知識と経験を有する(厚生労働省)”理学療法士等の訪問支援員が、「保育所その他の児童が集団生活を営む施設として厚生労働省令で定めるものに通う障害児につき、当該施設を訪問し、当該施設の障害児以外の児童との集団生活への適応のための専門的な支援その他の便宜を供与する」事業です。
 文部科学省が所管する「スクールカウンセラー」制度が“心の専門家”として臨床心理士などを全国に配置しているものとは異なります。
 
 対象施設は保育園、幼稚園、認定こども園、小学校、特別支援学校等であり、子どもに対する施設側と保護者との共通理解によって、その子どもへの保育や教育の効果を最大限に引き出すことを最大の目的としています。
 
具体的には、
①制度を利用するには、「保護者」が保育所等訪問支援にかかる給付費支給申請を市町村に行います。施設が支援の必要性を感じた場合には、保護者と相談の上、利用を提案します
②制度を開始するには、子ども本人に訪問支援に対する意向を確認することが必要です。保育所等訪問支援事業は知的障害を伴わない発達障害のある子どもも対象となるため、子どもの自尊心等にも特に配慮が必要となっています。この制度は、子どもと保護者が主体者でもあるということが大きな特徴です。
③施設側は、必要と判断すれば「障害児等療育支援事業(都道府県等が行う「地域生活支援事業」)を活用します。
④「保育所等訪問支援事業」は、上記③に対して保護者が必要を感じていても専門家の巡回・派遣に必ずしも結びつかないケースに対しての行政側のアウトリーチ型の制度と位置付けれらます。
 
 当該「保育所等訪問支援事業」は平成24年に開始されていますが、厚生労働省の「令和4年社会福祉施設等調査の概況」によれば、全国の「保育所等訪問支援事業」の事業所数は
令和2年度:1,582件(対前年比18.5%増)
令和3年度:1,930件(対前年比22,0%増)
令和4年度:2,281件(対前年比18.2%増)
 と、近年漸増しています。令和4年度は全国の障害福祉サービス等事業所・障害児通所支援等事業の対前年増加率はトップ(2位は児童発達支援事業15.9%)となっています。加えて令和6年度の報酬単価改定も相まって、今後さらに増加が予想される事業でもあります
 
 各保育所等におかれましても、自園で培われてきた障害児支援に係る見識や技量に加え、利用が増加している同事業を積極的に活用して、地域の幅広い要望に対応していくことが今後益々求められます。
 
税理士法人ゆびすい京都支店 泉岡伸也
 
 
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