「知」の結集 ゆびすいコラム

2024.08.09

暗号資産についての取り扱い

ビットコイン(BTC)のマイニングが初めて成功し、法定通貨と同じ立場であると一部に認められた頃(2009年)、BTCの価値は1BTC当たり約0.07円程でした。
時は流れ、執筆日である2024年7月26日現在、BTCは、1BTC当たり約10,316,500円。
途方もない程の価値の上昇を見せていることは、皆様もご承知のことでしょう。
今回は、暗号資産に関する税金の取り扱いについて、個人の所得税を中心にご紹介したいと思います。
 
(注)前提として、暗号資産の税務上の取り扱いについては実務家の間でも意見の分かれるところであり、その暗号資産の種類や保有目的などによって様々な解釈が可能であることをお知りおきください。
 
1,所得の金額の計算方法
〇譲渡した場合
暗号資産を譲渡した場合の所得金額の算式は次の通りです。
 
  収入金額(譲渡価額)-譲渡原価(※1)-手数料等の経費=所得金額
 
  (※1) 年初暗号資産評価額+当年中暗号資産取得価額-年末暗号資産評価額(※2)
  (※2) 年末時点での1単位当たりの取得価額×年末時点で保有する数量
 
★評価方法
年末時点での1単位当たりの取得価額は、総平均法又は移動平均法のうちいずれか選択した方法により計算した金額となります。この選択は、暗号資産の種類ごとに、所轄税務署長への届け出により行います。選択しなかった場合には、法定評価方法である総平均法により評価することになります。
 
(総平均法)
暗号資産をその種類の異なるごとに区別し、その種類の同じものについて、その年1月1日において有していた種類を同じくする暗号資産の取得価額の総額とその年中に取得をした種類を同じくする暗号資産の取得価額の総額との合計額をこれらの暗号資産の総数量で除して計算した価額をその1単位当たりの取得価額とする方法
 
 
〇暗号資産同士を交換した場合
暗号資産同士を交換した場合も所得税の課税イベントになります。
 
(具体例)
・2023年1月1日に200万円で1 BTC(時価:1 BTC=200万円)を購入した。
・2024年4月1日に0.1 BTCを2 ETHで売却した。
(時価:1 ETH=50万円、1 BTC=1,000万円)
手数料については省略
   ETH→暗号通貨の一種であるイーサリアムの略
 
所得金額 = (50万円×2 ETH)-(200万円÷1 BTC)× 0.1 = 80万円
 
〇商品、サービスの購入、給与の支払い
 
(具体例)
・2023年1月1日に200万円で1 BTC(時価:1 BTC=200万円)を購入した。
・2024年4月1日に0.1 BTCで税理士に確定申告料100万円を支払った。
(時価:1 BTC=1,000万円)
 
所得金額 = (1,000万円×0.1 BTC)-(200万円÷1 BTC)×0.1 = 80万円
 
 
2,所得の種類
国税庁の見解では、暗号資産の譲渡に係る所得は譲渡所得ではなく、原則として雑所得に該当するとしており、損失の通算・繰越、相続税に関連する取得費加算などの規定の適用がない点に注意が必要です。ただし、雑所得となるのはあくまで原則であり、取引頻度などによっては事業所得に該当する場合もあります。また、NFTなど特定の資産については、原則に関わらず、譲渡所得として処理することも考えられます。
 
3,今後の展望
今回は個人の所得税に関する基本的な事項のみを取り上げました。
この他にも、法人税・消費税・相続、贈与税の取り扱いや、NFT、DeFiに関する取扱いなど、ご紹介しきれなかった事が数多くあります。
これから益々私たちの経済活動に浸透していくと予想される暗号資産ですが、その税務上の取り扱いは非常に難解なものになるでしょう。
お困りの際は是非、弊社の担当者までお問い合わせ下さい。
 
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