令和6年度税制改正において、「賃上げ促進税制」が拡充・延長されます。
改正の主なポイントは次の三点です。
①企業分類において、従来の「大企業」と「中小企業」との間に、新たに「中堅企業」が創設され、これら三区分に応じて、異なる税制が適用されます
②「中小企業」の税制を適用する場合には、控除未済額の5年間の繰越しが可能となります
③人的投資に対する上乗せ要件が拡充・変更されます
これら三項目それぞれについて、概要を述べさせて頂きます。
①の企業分類ついてですが、新しく創設された「中堅企業」とは、「常時使用する従業員数」が2,000人以下の法人のことを指す区分です。従来の制度における、「資本金等の額が1億円以下の場合には中小企業」「それを超える金額である場合には大企業」という資本金等による区分検討に加えて、新制度では「従業員数」による区分も考慮しなければならなくなりました。
次に②について、これまで賃上げ促進税制の摘要年度に十分な所得が発生せず、せっかく要件を満たす賃上げをしても、税額控除を使いきれないというケースが少なくありませんでした。これを受け、中小企業においては、5年間の繰越控除が認められるようになりました。この改正により、賃上げを行った年度が赤字となり、税額控除が受けられなかった場合でも、税額控除摘要の申告をしておく必要が出てきます。
最後に③にある「人的投資に対する上乗せ要件」については主に2つの改正があります。
まず、新たに創設された上乗せ要件として、「女性活躍支援」・「子育て支援」について厚生労働省から一定以上の認定を受けた企業については、税額控除率を5%上乗せされることとなりました。
女性活躍支援については「えるぼし認定」、子育て支援については「くるみん認定」という名称の認定制度の適用を受けていることが要件とされており、必要な認定等級は「中小企業」「中堅企業」「大企業」それぞれの税制で異なります。新設された上乗せ要件ですので、適用が可能かどうか一度ご検討頂ければと思います。
もう一つの改正点は、既存の「教育訓練費の増加」要件についてです。「前年度と比較して10%以上増加していること」という従来からの適用要件は変わらずそのままですが、「適用年度の教育訓練費の額が、雇用者給与等支給額の0.05%以上であること」という適用要件が追加されました。これにより、教育訓練費があまりに少額の場合には適用できなくなりました。
尚、この新制度は令和6年4月1日以後開始する事業年度から適用されます。
実際に「賃上げ促進税制」の適用を考える際には、「対象となる給与額とはなにか」「比較対象となる従業員とは」等、より詳細な検討が必要となりますので、ご不明な点があれば、是非ゆびすいの担当者にお問い合わせ下さい。
税理士法人ゆびすい 大阪支店 石橋 尚大