非上場株式が相続財産に含まれる場合に対応に困ることが多いのが納税資金です。業績が好調であったり、純資産が多額な会社ほど株価が高くなる傾向にありますが、売却先をみつけることは困難なケースが多いです。そのような場合に非上場株式をその発行会社に買い取ってもらうという手段がございます。今回はこのような状況で特例を活用し、手元資金を潤沢にする方法をご紹介いたします。
【通常の取り扱い】
通常、個人所有の非上場株式をその発行会社に譲渡した場合で、その譲渡対価の額がその譲渡した非上場株式に係る資本金等の額を超えるときは、その超える部分の金額は配当所得とみなされて税金が課税されます。(みなし配当:総合課税 累進課税最大約55%(所得税・住民税の税率))
※今回は相続した株式に関して、株式の取得価格=資本金とします。
(事例)売却価額(株式の評価額)1億円、資本金1,000万円(株式の取得価格)とする場合
9,000万円(みなし配当)×約55%=4,950万円←納税額
このように、通常は累進課税で計算されるため多額の納税が必要となります。
【課税の特例】
相続または遺贈により財産を取得し、納付すべき相続税額がある個人が、相続税の申告書の提出期限の翌日以後3年を経過する日までの間に、取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合において、その譲渡対価の額がその譲渡した非上場株式に係る資本金等の額を超えるときは、その超える部分の金額については、みなし配当課税を行わずに全額を非上場株式の譲渡所得の収入金額とする特例制度。(譲渡所得:分離課税 20.315%(所得税・住民税の税率))
(事例)上記同条件で取引するものとする。
9000万円×約20%=1,800万円←納税額
上記のように、特例を活用した場合には約3,000万円程度納税額を減少させることが可能です。
本特例を利用する場合には、届出の提出期限や要件がいくつかございますのでご留意ください。
このように相続後の対応が重要となってきます。お困りの際は是非とも弊社担当者にご相談いただけたらと考えております。
(参考文献)
税理士法人ゆびすい 堺事業部 羽賀 友亮