「知」の結集 ゆびすいコラム

2024.10.21

ストックオプション制度について

 今回のゆびすいコラムでは、ストックオプション制度についてご説明できればと思います。
 
 ストックオプション制度とは、会社が従業員に対してあらかじめ決まった価格(権利行使価格)で自社の株式を購入する権利を与える制度です。この権利を与えられた者は自社の株式が市場公開された後に権利行使価格で購入し、将来、株価が上昇しているときに市場で売却することでキャピタルゲインを獲得することができます。ここでキャピタルゲインとは、いわゆる値上がり益のことで、安く買い高く売ることによって得られる利益のことを指します。
 
 この仕組みにより、会社自体にも大きなメリットがもたらされることが期待できます。従業員はキャピタルゲインを得るには株価が上昇しなければならないため、会社の業績を上げる必要があります。そのため、働くことに対するモチベーションが上がり、頑張って仕事に取り組むことで、企業の大きな成長につなげることができるのです。企業と従業員との間で、まさにWin-Winの関係ができあがるのです。
 
 また、いくつか要件を満たせば、税制適格ストックオプションというものに該当することになり、そうなればさらなるメリットがあります。通常のストックオプションでは株式の購入時と売却時の2度、課税対象となりますが、税制適格ストックオプションでは、購入時は税金が発生せずに繰り延べられ、売却時のみ税金が発生することになります。さらに、通常のストックオプションでは、購入時には最大55%(復興特別所得税は除きます。以下同じ。)の税率が、売却時には20%の税率がそれぞれ課されますが、税制適格ストックオプションでは、売却時に一律20%の税率が課されるのみになります。その計算式は下記の通りで、非常に簡単に計算することができます。
 
〈計算式〉 (株式の売却価格-株式の購入価格)×売却株数×税率(20%)
 
 ただし、いくつか注意点もございます。このストックオプション制度は、株価が市場で値上がりすることが前提となる制度であるため、株式公開の計画や業績向上の見込みを権利を付与する従業員に対して説明できなければなりません。また、権利行使価格をいくらにするのか、どの従業員に付与するのかなどは慎重に決めなければなりません。
 さらに、税制適格ストックオプションに該当するためにはいくつか要件があると述べましたが、実はこの要件は少し厳しいものとなっています。他人への譲渡が禁止であることや保管委託契約が必要なこと、発行形態が無償であること、さらに権利行使価格や権利行使期間、付与対象者にも制限があり、これらをすべて満たして初めて税制適格ストックオプションとして認められることになります。ただし、令和6年度の税制改正により、権利行使価格と付与対象者と保管委託契約の3点については、要件緩和が図られております。税制適格ストックオプションの適用要件と税制改正の詳しい内容に関しましては、経済産業省のホームページにて掲載されていますので、参考にしてください。
 
 
 とはいえ、このストックオプション制度は、優れた人材の確保や将来的な成長を狙うベンチャー企業などを中心に導入が増加している傾向にあります。もしここで初めてこの制度の存在を知ったという方も、興味を持って詳しく調べてみるのもありではないかと思います。お困りの際は、ぜひ弊社担当者までご相談いただけたらと考えております。
 
税理士法人ゆびすい 大阪事業部 丹藤和輝
 
 
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