「知」の結集 ゆびすいコラム

2024.12.06

「103万円の壁」と人手不足

 2024年10月に行われた衆議院選挙において「国民の手取りの増加」が争点となった結果、所得税の扶養控除の境界線である「103万円の壁」の見直しが検討されています。石破首相も所信表明演説で引き上げを明言しました。
 
 どの業界でも人手不足が慢性化している状況ですが、幼保こども園業界、介護業界の経営者の方も長年頭を悩ませている問題だと思います。
 
 「103万円の壁」については、様々な報道により詳細をご存じの方も多いかと思いますが、簡単に説明すれば所得税の扶養控除(配偶者控除)を受ける要件としての収入の上限額です。
 
 この上限額が「103万円」になったのが1995年。当時の最低賃金は611円でした。103万円を時給611円で割ると約1,685時間、週32.4時間の計算でした。
 
 2024年度の全国平均の最低賃金時給は1,054円です。103万円を1,054円で割ると約977時間、週18.7時間。つまり現行では最低賃金でも週18.7時間までしか働けないとなります。
 
 さらに地域差はありますが、東京都内のある公立保育所の場合、2024年度の保育士の求人は時給1,800円でした。年間103万円までとすると、週11時間しか働けません。すなわち常勤職員1人分の労働時間を充足させるためには扶養の範囲内で働く保育士が4人必要となるのです。保育士不足の中、これでは配置基準を満たす人員の確保でさえ苦心する状態と言えます。
 
 ちなみに今般議論されている「178万円」は、103万円に最低賃金の上昇率1.725倍(1,054円÷611円)を乗じた金額です。仮に178万円になったとしても時給1,800円では週19時間労働の計算となりますので、人手不足解消にはまだまだ足りないとは感じます。
 
 いわゆる「壁」には他にも「100万円」「106万円」「130万円」「150万円」があります。税制、社会保険等を総合的にわかりやすい制度に見直しが入って、働きやすい環境になればいいなと思います。
 
まずは今年の税制改正に注目です。
 
税理士法人ゆびすい 京都支店 水口 由季雄
 
 
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