日本の医療保険制度を支える重要な仕組みの一つに「高額療養費制度」があります。これは、医療費が一定額を超えた場合、超過分を保険で補填する制度で、国民の経済的な負担の軽減に寄与してきました。しかし、近年の医療費増加を背景に、その制度運用に課題が浮上し、現在見直しが進められています。
高額療養費制度とは?
高額療養費制度は、1ヵ月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、自己負担限度額から超過した金額分が払い戻される仕組みです。高額療養費制度を利用する場合、医療機関で支払いをした後、申請を行い、審査が完了すると超過分の医療費が払い戻されます。
【利用の流れ】
1.窓口で医療費を支払う。
2.申請書類を提出する。
・加入している公的医療保険の公式サイトや市区町村の窓口で、高額療養費の申請書を入手。
・必要事項を記入のうえ、以下必要書類を添えて加入している公的医療保険に申請。
≪申請に必要な書類の例≫
・高額医療費の申請書、医療機関の領収書の複写
・健康保険証(マイナ保険証)の複写、払戻用の振込先口座情報など
※高額療養費の申請期限は、医療機関で支払いをした日の翌月の初日から2年間。
3.高額療養費が払い戻される。
・申請した書類の審査が完了すると、自己負担限度額を超えた分の医療費が払い戻される。
※払い戻されるタイミングは、医療費の支払いから約3か月後。
【適用されない項目の例】
・入院中の食事代、雑費(例:日用品、交通費など)、自由診療(例:予防接種、歯科矯正、レーシック、美容整形など)
自己負担限度額は、年齢や所得に応じて異なります。例えば70歳未満で年収約370万円~770万円の区分で総医療費(※)が1,000,000円かかった場合、区分上限額(267,000円)の3割負担(80,100円)と上限額超過分の1%(7,330円)の合計が患者の自己負担金額となります。医療機関の窓口で300,000円を負担した場合は、212,570円が払い戻されます。
※この場合の総医療費とは、保険適用される診察費用の総額(10割)です。
医療費の財源確保のため、厚生労働省の下で話し合いが進められており、2024年12月19 日時点では、自己負担上限額を10%引き上げる案が検討されており、今後年収の壁と併せて、注目すべき内容になっております。
医療介護専門部 堺井 来紀