所得税の計算において、納税者の個人的な事情を考慮し、所得から一定の金額を差し引ける制度として所得控除があります。代表的なものだと、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除などがありますが、今回は少しマニアックな雑損控除と呼ばれるものをご紹介できればと思います。
雑損控除とは、本人又は本人と生計を一にする配偶者その他の親族(所得が48万以下の方)の有する資産について、災害・盗難・横領によって損害を受けた場合に、一定の金額を所得から控除することができる制度になります。他にも、シロアリなどの害虫や火薬物の爆発による被害についても対象となります。ただし、詐欺や恐喝による損害については対象とはなりません。
対象となる資産は、生活をするうえで通常必要な住宅、家具、衣服などの資産や現金に限られます。そのため、ゴルフ会員権や趣味で購入したスポーツカーなどの生活に必要でない資産や事業用の資産は対象とはなりません。また、生活に必要となるものでも1個当たりの価額が30万円を超える書画、骨とう、貴金属なども対象とはなりません。
控除額は、次のように計算します。
次の①と②のうちいずれか多い金額
①(損失額-保険金等の金額)-総所得金額×10%
②(災害関連支出※-保険金等の額)-5万円
※災害によって損壊した家屋の取壊し費用や除去費用など
また、雑損控除をしてもその年の所得金額から控除しきれなかった場合には、翌年以後3年間繰り越して控除を受けることができます。
滅多に登場する機会がない雑損控除ですが、登場する原因となる事柄はどれも人々の暮らしにマイナスなものしかありません。
適用することのない人生のほうが幸せだと思います。
税理士法人ゆびすい 大阪支店 丹藤和輝