介護・福祉業界では、日々職員が利用者と向き合い、心を込めてサービスを提供しています。一方で、現場で働く職員が安心して成長できる環境が整っているかというと、必ずしもそうではない現状があります。特に中小規模の施設では、人事制度が不十分で、職員が自分のキャリアの成長や評価に対して不安を感じているケースも少なくありません。その結果、職員の相次ぐ退職や、法人と職員間の労務トラブルに発展するケースも散見されます。
職員のこれら不安を解決するためには、人事制度である「等級制度」、「人事評価制度」、「賃金制度」を見直す必要があります。
1..等級制度の整備:職種ごとに明確な成長ステップを設定します。
例えば介護職の中でも、「初任者」「中堅」「リーダー」「管理職」など、スキルや責任に応じた等級を設定し、等級ごとに求められるスキルや役割を明確にすることで、昇格・昇給の基準を明確にします。
2..人事評価制度の透明化:客観的な評価基準を設定します。
業務遂行能力・介護業務の専門性・リーダーシップ・利用者への対応スキルなどの明確な評価項目を設定します。また評価の際には、職員と対話し、フィードバックを行う仕組みを整えます。
3..賃金制度の連動:評価結果が昇給・昇格に反映される仕組みづくりを行います。
仕組みを作ることで評価者による主観評価からの脱却を目指します。
このように人事制度を見直すことで、職員が「自分の頑張りが正当に評価されている」と実感できる環境を整える事が出来、その結果、モチベーション向上、人材の定着、サービスの質向上、組織全体の活性化といった好循環が生まれます。
ただ、人事制度の見直しは、一朝一夕では実現しません。経営者の強い決意と、計画的な取り組みが不可欠です。
法人内部だけでの整備が難しい場合は、外部の専門家の支援を受けることも有効な方法です。
人事制度の改訂は処遇改善加算の算定要件にも含まれており、整備が不十分だと監査で指摘を受けやすくなります。
明確な評価基準と適切な処遇を整備することは、これからの介護・福祉事業所にとって非常に重要な課題です。人事制度を見直し、職員が納得できる評価と処遇を提供することが、組織全体の成長につながるのではないでしょうか。
株式会社ゆいびすコンサルティング 医療介護専門部 髙山幸子