令和6年度税制改正により強化された賃上げ促進税制ですが、中小企業においては、未控除額の5年間の繰越しが可能となっています。
令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度より適用されるため、令和7年3月以降に決算を迎える法人は注意が必要です。
繰越控除措置の適用には次のケースが考えられます。
①要件を満たす賃上げを実施したが、当期赤字である場合。
法人税額:0円
賃上げ額:1,500千円(前年度から2.5%以上増加したとする。)
税額控除額:450千円(1,500千円×30%)
→未控除額450千円を翌年度以降5年間の繰越し。
②賃上げによる税額控除額が控除上限額(法人税額の20%)を上回る場合。
法人税額:1,000千円
賃上げ額:1,500千円(前年度から2.5%以上増加したとする。)
控除上限額:200千円(1,000千円×20%)
税額控除額:450千円(1,500千円×30%)
→未控除額250千円(450千円-200千円)を翌年度以降5年間の繰越し。
これまでは賃上げを実施した年度において十分な所得がなく、控除上限額を上回る部分が切り捨てられていた法人においても、未控除部分を繰越すことができるようになりました。
なお、未控除額を翌年度以降に繰り越す場合は、未控除額が発生した年度の申告において、「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」を提出する必要があります。
したがって、赤字であっても賃上げの判定を行い、明細書の添付を忘れないよう注意しましょう。
税理士法人ゆびすい 岡山事業部 北優人