M&A等をするに当たって他者の株価を算定する際に問題となってくるものに営業権があります。
営業権は税務上、「企業が持つ好評等の諸要因によって期待される将来の超過収益力を資本化した価値」とされており企業の資産とされます。
超過収益力は下記の算式で算定されますが、後述の理由から平均利益金額が5,000万円以下の企業では原則算出されないことには留意が必要です。
(平均利益金額×0.5)- 標準企業者報酬 -(総資産価額×0.05)= 超過利益金額
平均利益金額は課税時期の属する年の前3年間における所得の平均になります。ただし非経常的な利益や借入金の支払利子、役員報酬の金額等はなかったものとして計算されます。
標準企業者報酬は平均利益金額の区分に応じて算出されますが、平均利益金額が5,000万円以下の場合、5,000万円(平均利益金額)×0.3+1,000万円=2,500万円となり、計算上超過利益金額が生じないことから、営業権は算出されなくなります。
総資産価額は財産評価基本通達により算定された総資産価額であり、超過収益力を算定する上で、投下資本による部分を排除するために平均利益金額から控除されます。
営業権は売る側は評価したいのですが、買う側は営業権なんてない、と言いたいものです。両方の立場になることも想定されるので、営業権を評価することが適正価値になるとまでは言い切らず、考慮した結果0評価となったという方が良いという考えもあります。
近年では様々な場面で企業価値の算出を求められる機会があります。その際には企業が保有する現物資産の評価に加えて将来の収益力である営業権も考慮しましょう。
税理士法人ゆびすい 堺事業部 射場 祐介