2026.06.02
連日、生活用品や原材料の値上げのニュースが流れており、ビジネスにおいても日常においても「物価高騰」を意識しない日はありません。
また、毎年のように最低賃金は上昇の一途を辿り、大手企業を中心に初任給を大幅に引き上げる動きも活発化しています。
このような経営環境の中で、経営者の皆様はどのようにこの物価上昇下の社会を乗り切ろうと考えておられるでしょうか。
物価高騰局面において、黒字倒産のリスクは跳ね上がります。仕入価格が上がれば、売上が同じであっても必要な「運転資金(経常運転資金)」が膨らむからです。
まずは、この物価上昇の中で、企業内部の資金がどの程度必要になっているかを正しく計算しましょう。
運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
この数式を今すぐ直近の数字で計算してみてください。物価高により「棚卸資産(在庫)」の評価額が上がり、さらに取引先からの支払い遅延などで「売上債権」が膨らめば、利益が出ていても手元のキャッシュは一瞬で枯渇します。
自社の資金繰りにどの程度の余裕があるかを確認するためには、「手元流動性比率」を算出することが有効です。
手元流動性比率(ヶ月) = (現預金 + すぐに換金可能な有価証券等) ÷ 月商(平均月間売上高)
目安としては不測の事態に備えて「2ヶ月以上」は保有しておきたいところです。計算した結果、これを下回る場合には早急に手元資金を厚くする対策が必要になります。
資金の枯渇を防ぐ具体的な方法としては、以下の3点が挙げられます。
法人税や消費税などの税金は、企業にとって最大のキャッシュアウト(現金の流出)要因の一つです。しかし、国の政策(税制改正)を正しく理解し、味方に付けることができれば、それは強力な防衛資金へと変わります。
これまでの一般的な節税といえば、照明のLED化や固定資産の購入、保険への加入など、多くは「キャッシュアウトを伴う節税」でした。しかし、手元現金を残すべき物価上昇期において、この手法は必ずしも得策とは言えません。
今取り組むべきは、不良在庫がある場合の「評価損計上」や、回収不能となった売掛金の「貸倒損失処理」など、帳簿上の適切な会計処理のみで納税額を減らし、キャッシュを法人内に留保させる方法です。
また、税金の相談の際、どうしても「税金を減らすこと(キャッシュアウトを抑えること)」だけに目を奪われがちですが、税理士だけでなく社労士やコンサルタントとも連携することで、国の支援策を最大化できます。
人件費が高騰する現代において、付加価値を生まない「作業」にコストを割く余裕はありません。自社のどの業務がAIに代替できるのか、どこをDX化できるのかを真剣に検討すべき局面です。
バックオフィス(経理・総務)の効率化を例に挙げると、ネットバンキングの活用による振込手間の削減、現金取引の排除(カード決済や電子マネーの導入)、AI-OCR(領収書の自動読み取り機能)による仕訳の自動化などが非常に有効です。
また、旅費精算や勤怠管理をシステム化することで業務を徹底的に省力化し、経理・総務担当者の役割を、単なる「仕訳の入力者」や「勤怠の管理者」から、「データの異常値をチェックする財務マネージャー」へと変革させていきましょう。これにより、経営者の意思決定に寄与し、組織全体の能率が向上します。
コストカットには限界があります。物価高騰に対する最終かつ最大の防衛策は、大前提として「正当な価格転嫁」しかありません。しかし、「なんとなく仕入が上がったから」という理由だけでは、顧客を納得させることは不可能です。
そこで、まずは月次試算表や決算書を「変動損益計算書」へと組み替えましょう。変動損益計算書とは、「いくら売れば、いくら利益が出るか(あるいは赤字にならないか)」がひと目でわかる、経営者の意思決定のためだけの損益計算書です。
変動損益計算書は、以下のような非常にシンプルな構造で成り立っています。
「限界利益(会社に残る本当の稼ぐ力)」は、数式を並び替えると「固定費 + 利益」となります。つまり、稼ぎ出した限界利益の中で、毎月の固定費(人件費や家賃)を賄うという構造です。
持続的に利益を出している企業の経営者は、この変動損益計算書から導き出される各数字が常に頭の中に入っています。
この損益計算書を作成することで、経営者は次の3つの強力な武器を手に入れることができます。
物価高騰という荒波は、自社の経営が「どんぶり勘定」だったか「緻密な管理経営」だったかを残酷なまでに浮き彫りにします。
しかし、このピンチをチャンスとして捉え、自社の企業体質を根本から変革していくことは、厳しい社会情勢を生き抜くための最強の企業防衛策となります。
税理士法人ゆびすい 福岡支店
