2026.07.27
それでは、配偶者が財産をすべて相続すれば、家族全体の相続税も必ず少なくなるのでしょうか。
結論から申し上げると、必ずしもそうではありません。
例えば、父、母、子ども2人の家族で、父の財産が1億5,000万円、母自身の財産が5,000万円ある場合を考えてみましょう。父の相続を「一次相続」、その後に母が亡くなった際の相続を「二次相続」といいます。今回は、一次相続から二次相続までの間に、財産の消費や増加、評価額の変動がないものとし、母が父の財産をすべて相続する場合と、母の取得額を0円とする場合を比較します。
※債務、葬式費用、生前贈与、小規模宅地等の特例などを考慮しない簡略化した事例です。
一次相続では、母が父の財産1億5,000万円をすべて相続します。配偶者の税額軽減により、一次相続の相続税は0円です。その後、母の財産は、もともと所有していた財産5,000万円と父から相続した1億5,000万円を合わせた2億円となります。この場合の税額は、次のとおりです。
(イ)一次相続の相続税 0円
(ロ)二次相続の相続税 3,340万円
(ハ)(イ)+(ロ) 3,340万円
※配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、納付税額が0円となる場合でも相続税の申告が必要です。
次に、母の取得額を0円とし、子ども2人が父の財産を相続する場合を考えます。この場合、一次相続全体の相続税は1,495万円となります。一方、二次相続の対象となる母の財産は、もともと所有していた5,000万円だけです。この場合の税額は、次のとおりです。
(イ)一次相続の相続税 1,495万円
(ロ)二次相続の相続税 80万円
(ハ)(イ)+(ロ) 1,575万円
今回の例では、母がすべて相続する場合と、母の取得額を0円とする場合とで、一次相続と二次相続を合わせた税負担に1,765万円の差が生じます。一次相続だけを見れば、母がすべて相続する方が有利です。
しかし、この例の二次相続では、母の財産が増えていることに加え、配偶者の税額軽減を利用できないことや、法定相続人の減少により基礎控除額が少なくなることなどが重なり、相続税の負担が大きくなります。
ただし、今回のシミュレーションは、母がすべて相続する場合と、まったく相続しない場合という両極端なケースを比較したものです。母が相続しない方が、常に最善であるというわけではありません。実際の遺産分割は、相続税負担の大小だけで決めるものではありません。配偶者の生活費や介護費用、自宅の確保なども考慮する必要があります。
一次相続の税額だけでなく、配偶者がもともと所有している財産も確認し、二次相続まで含めて税額を試算することが大切です。
税理士法人ゆびすい 相続専門部
