「知」の結集 ゆびすいコラム

2021.09.21

役員に対する家賃にも影響!インボイス制度の影響の波

 令和5年10月1日からのインボイス制度の開始に向けて、令和3年10月1日に登録事業者の申請が始まります。
 
 今回は、このインボイス制度の影響が及ぶ取引について解説いたします。インボイス制度の内容は別の記事にもありますので、ぜひそちらもご覧ください。
 
1.インボイス制度とは?
 インボイス制度とは、現行の区分記載請求書に代え、登録事業者が発行した適格請求書等(インボイス)に基づいて仕入税額控除を行う制度です。
 
2.仕入税額控除への影響
 適格請求書等に基づいて仕入税額控除を行う制度ですので、適格請求書等の保存がなければ、その仕入れ等に係る消費税を納付税額の計算上差し引くことができません。そのため事業者のほとんどが、この適格請求書等を発行するための要件を確認し、システム改修をするなどの検討・対応をしています。
 ここで問題は、消費税を納付しない免税事業者は登録事業者になれず、この適格請求書等を発行することができないということです。インボイス制度の開始後、免税事業者からの仕入れは、以下のように影響し、仕入側の税負担を増加させます。
◆インボイス開始前:売上げに係る消費税1,000-仕入れに係る消費税800=納付税額200
◆インボイス開始後:売上げに係る消費税1,000-仕入れに係る消費税×=納付税額1,000
 
3.インボイス制度の対象となる取引
 この制度の対象となるのは、請求書が毎回発行されるような取引に限りません。一般的に、契約書に基づく決済が行われ、請求書や領収書の交付がないような不動産賃貸等の取引であっても、仕入税額控除を適用するためには、原則として適格請求書等の保存が必要となるのです。したがって、この場合も相手方が免税事業者であれば、仕入税額控除を適用することはできません。
 それでは相手方が登録事業者であったとして、インボイス制度開始後はこのような不動産賃借料等についても適格請求書等を毎回発行してもらわなければならないのでしょうか。
 その煩雑さを軽減するために次の2つの方法があり、弊所では②の方法をお勧めします。
①適格請求書等を一定期間まとめて発行してもらう
②別途登録番号等の通知を受け、契約書や通帳と併せて適格請求書等とする
 
4.役員から建物や駐車場を借りている場合
 不動産の貸し手が登録事業者となれば、その貸し手に消費税の納税が発生します。したがって、親族経営における役員から建物や駐車場を借りる場合には、法人と個人を一体として考え、役員が登録事業者となるべきかどうか、負担を比較して有利な方法を選択することをお勧めします。
 インボイス制度には経過措置があり、制度開始後6年間は免税事業者からの仕入れ等であっても一定割合の仕入税額控除が認められています。
◆令和5年10月1日~令和8年9月30日:仕入税額相当額×80%
◆令和8年10月1日~令和11年9月30日:仕入税額相当額×50%
 有利比較の際には、この経過措置や役員の課税方法(原則課税or簡易課税)なども加味して比較することが重要です。
 
 インボイス制度は、想像以上に検討課題の多い制度です。
 思わぬ負担が生じないように、自社の課題を洗い出し、事前に検討していく必要があります。
 インボイス制度までの準備を検討される事業者様におかれましては、お気軽に弊所までご相談ください。
 
大元 誠児
 
 
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