「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.03.13

『会社標本調査』から見る企業の実態?

先日のブログで紹介しました『会社標本調査』から、今日は「営業収入」「所得金額(率)」「減価償却費」の項目について見ていきたいと思います。

国税庁HPへリンク) 平成19年度の全企業の営業収入(売上高)の合計額は約1,5629兆円。この数字は平成14年度以降最も高い数字です。所得金額の合計額は約55兆円、これもここ10年では最も高い水準となっています。

ただし、業種別にみると大きな差異があることが認められます。所得率(所得金額÷営業収入金額)が最も高い業種は「鉱業」となっており、19.7%、続いて金融保険業が11.0%となっています。逆に所得率が最も低い業種は、卸売業で2.5%、続いて建設業が3.0%となっています。

続いて減価償却費の項目を見ていきます。減価償却費は一般的に定率法を採用している企業が多いことから、資産取得初期が最も償却額が高くなります。つまり、減価償却費の発生額を見ることで、企業の設備投資の増減を見ることができると言えます。この観点から見ると、減価償却費は平成18年度からは3兆円超減少しており、企業の設備投資が鈍化傾向にあることが認められます。

業種ごとに減価償却費を見る際の一つのポイントとして「損金算入割合」があります。減価償却費の計上額は法人の任意で決定できます。つまり、赤字を避けるためなどに減価償却費をあえて抑えるといったことが可能なシステムとなっています。「損金算入割合」とは、税法上で定められた償却費の額のうち何%を償却費として実際に計上したか、の割合です。

これを業種ごとにみていくと、「鉄鋼金属業」や「化学工業」は97%と高い数値であるのに対して、「繊維業」などは80%を下回っていることがわかります。

繊維業は「所得率」も全業種中低い業種類に位置し、しかも減価償却費の損金算入割合も低いことから、繊維関係の企業の厳しい現状をうかがい知ることができます。

この他、様々な角度からこの調査結果を見ることで、企業の実態を分析することができます。興味があればじっくり目を通してみると皆さんの会社の状況も見えてくるかも知れません。

(税理士:中芝康仁)