「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.11.05

『 人 』 を残す、ということ

陰気臭くて、個人的には無関心の対象だった楽天の野村監督、でも引退をきっかけに知った彼の座右の銘? この言葉は非常に重みがあって心に響く言葉でした。

『財を残すは下、仕事を残すは中、人を残すは上』 もともとは誰の言葉なのかは知りませんが、簡単に言うと、 「お金や財産を残して死ぬものは下、仕事や功績を残して死ぬものは中、人を育てて死ぬものは上」 ということでしょうか。

『人を育てることが究極の目標』、なんてことは意味不明すぎます。盲目正義でボランティア的宗教的な気持ち悪さがあります。でも、企業における究極の目標を『金儲け』と素直に正直に考えたときに、金儲けのためには、そのお金を作り出すための仕事が必要です。仕事がなければ金儲けはできません。

そしてその仕事を作り出すのは人であって、より好業績をあげる仕事を作り出すのも人であって、それを永続的に成長させる仕組みを作り上げるのも人。

結局、仕事を作り出せる人、仕組みを作り出せる人、財を残せる人に仕事を与えることができる人・人間関係を育成することが、企業における究極の目標である「金儲け」のための必須条件なんだと、そういう理解です。それができて『上』なんだと。

あたりまえと言えばあたりまえですが、人を残すというのは本当に難しい。人を育成するためには、それぞれ個人の思いや夢も大切にしなければならないし、自分で考える能力も伸ばさなければならない。モチベーションの上がり方も一人ひとり全く違う。長所をできるだけ開花させ、組織の中でそれを一人ひとり十二分に発揮させる。本当に本当に難しいから、だから『上』なんだと。

教科書的なものではなく、ある種の哲学的なものが必要なんだと思います。でもコミュニケーションが大事なのは間違いない、そこから得られる最も大切なことは 『人を知ること』 だから、もっともっと人を知り、『人を活かせる人間』 でありたいと思うし、そうなる努力をしたいと思います。

話それて、この言葉に、上・中・下とありますが、上・中・下を決めるのは誰でもなく自分自身だと思っています。

何を成し遂げても何をやっても自分を『下』や『中』としか評価できない人が最近多いように感じます。だから他人の評価を過剰に気にして、必要以上の重圧を背負い込むことで結果的に自分自身にブレーキをかけてしまっているように思います。

自分が目標とすることに『上』をつけられるように皆がそれぞれ取り組んで、自分自身で自分に対して必ず『上』をつけられるようにしたいものです。

『自分自身に上をつけることができるという能力』が、さらなるいい意味での向上心を生む成果につながると思います。プラスのオーラを身にまとえるはずです。達成感を得ない完ぺき主義はマイナスオーラを感じます。

ということで、引退の最後の最後に野村監督をリスペクトすることができました。

(税理士 : 中芝康仁)