「知」の結集 ゆびすいコラム

2016.09.02

【災害時の会計処理について①】

 今年4月の熊本地震や先日の台風など近年の地震、水害等において甚大な被害を及ぼす災害が頻繁に起こっています。

災害などの緊急時に特別の会計処理が必要とされているわけではありませんが、義援金の受け入れや、被災した園舎、校舎の資産の処分等についてお話ししたいと思います。

≪災害損失勘定について≫
学校法人会計基準では、「事業活動収支計算書」の特別収支ー事業活動支出の部において、「災害損失」という勘定科目があります。
この勘定科目の適用範囲及び会計処理について、日本公認会計士協会学校法人委員会実務指針第45号において、「災害損失とは、資産処分差額のうち災害によるものをいう。」とあり、「災害とは暴風、洪水、高潮、地震、大火その他異常な現象により生ずる災害」と言っています。
災害と言っても例えば、盗難や事故、通常の火災などは学校法人会計では「災害」とは言いません。
つまり、天変地異のことを言います。

≪被災した学校法人の会計処理≫
○収入
義援金を受け入れた場合は、大科目「寄付金(収入)」の小科目「特別寄付金(収入)」とします。
義援金の額が多額の場合は小科目に「○○義援金(収入)」の科目を設定してもよいと思います。
物資等の寄付を受け入れた場合は、事業活動収支計算書の、特別収支の大科目「その他の特別収入」の中の小科目「現物寄付」とします。
○支出
園舎、校舎が損壊し取り壊すことになった場合、除却処理を行います。
この時に生じる資産処分差額について、事業活動収支計算書の、特別収支の大科目「その他の特別支出」の中の小科目「災害損失」として計上し、他の除却資産と区別します。
被災により現金等を失った場合は、大科目管理経費(支出)」の小科目「雑費(支出)」で処理します。
失った額が多額の場合は、収入の場合と同じく、小科目に「○○(災害の名称)関連費(支出)」の科目を設定すると良いかと思います。
被災した職員や生徒やその家族へ見舞金を支出した場合は、職員であれば、管理経費の「福利費(支出)」生徒やその家族であれば、教育研究経費の「福利費(支出)」で計上します。

計算書類の作成においては、決算時に災害に対するすべての事柄が終了していない場合が多いですので、その場合には、「その他財政及び経営の状況を正確に判断するために必要な事項」において必要事項を注記することが必要になります。

注記する内容としては、
①被害の状況(被災場所、被災資産の種類及び帳簿価額、撤去費用の見積もりなど)
②見積もりによって計上した金額がある場合は、その旨及びその金額と理由
③その他当該被害が、教育研究活動に及ぼす影響
などが考えられます。

≪支援する学校法人の会計処理≫
被災した学校法人に義援金の送金や、物資の提供を行なったときは、義援金について大科目「管理経費」の小科目に「○○義援金」を設けて計上します。
また、食料品を購入して寄付した場合はその購入金額を義援金と同様に「○○義援金」として計上します。
スクールバスや備品など、学内の固定資産を被災地に寄付した場合には、大科目「資産処分差額」の中の小科目「○○義援処分差額」を設けて計上します。
被災した生徒を受け入れ、授業料等の減免や教材の無料配布を行った場合は、その額を「教育研究経費(支出)」の「奨学費(支出)」として計上します。

仙台支店 大道 厚生
教育・福祉事業