「知」の結集 ゆびすいコラム

2019.07.22

学校法人の第2号基本金と組入計画

今回のゆびすいコラムでは、決算巡回時に園舎の建替を検討されている学校法人さんから質問を受けました、学校法人の第2号基本金について書きたいと思います。
 
学校法人会計基準第9条において、学校法人の基本金は、「学校法人がその諸活動の計画に基づき必要な資産を継続的に保持するために維持すべきものとして、その帰属収入のうちから組入れた金額を基本金とする。」と定義されています。
学校法人の目的は教育研究活動であり、教育研究活動には土地や建物、備品などの固定資産が不可欠ですから、学校法人における基本財産(基本金)を固定資産(有形固定資産)と考え、永続的に保持するために設けられているのが基本金の制度です。
基本財産に対応する金額を当該年度の事業活動支出に充てることなく基本金に組み入れることにより、基本金の部に留保し、学校法人が永続的に存続するために最低限保有すべき自己資金額を確保します。
 
組み入れる金額については、学校法人会計基準第30条に以下のように定められています。
設立当初に取得した教育の用に供する固定資産の価額、及び新たな学校の設置若しくは既設の学校の規模の拡大や教育の充実向上のために取得した固定資産の価額:第1号基本金
将来取得する固定資産に充てるために、事前に計画的、段階的に積立てる金銭その他の資産の額、その取得時点において第1号基本金に振り替わるもの:第2号基本金
奨学基金、研究基金、国際交流基金等として継続的に保持し、かつ運用する金銭その他の資産の額:第3号基本金
恒常的に保持すべき資金として、別に文部科学省の定める額:第4号基本金
今回はこれらのうち、特に第2号基本金とその注意点について述べていきます。
 
まず第1号基本金については、端的には固定資産の増加の額となりますので、毎年、固定資産を購入する度に増加していきます。
それに対し、第2号基本金は、強制的に設定されるものではなく、法人の意思により設定するもので、将来、第1号基本金の対象となるべき固定資産の取得財源となる資金の額を、その固定資産の取得前から基本金組入れを前もって段階的に行い、将来の取得資金を確保していきます。第2号基本金に設定した固定資産の取得後は第1号基本金へと振替ます。
また、第2号基本金は将来固定資産を取得することを目的とした金銭その他の資産の額であるので、一般の資金と区別し「~引当特定資産(預金)」などとして、特定資産に計上することが必要です。
 
会計基準では、持続的事業活動収支の均衡を図る観点から、将来高額な固定資産を取得しようとする場合は、取得年度に基本金組入れが集中しないよう、早めに基本金組入計画を立て、取得年度に先行して年次的、段階的に基本金組入れを行うことにより基本金組入れの平準化を図ることを求めています。
したがって、各年度の事業活動収支差額によって組入額を調整することは避けなければならず、会計基準では「前項第2号又は第3号に規定する基本金への組入れは、固定資産の取得又は基本金の設定に係る基本金組入計画に従い行うものとする」と定めています。
 
基本金組入計画は、以下の点に注意して行う必要があります。
正規の議決機関で組入決議をすること
理事会にて「第2号基本金の組入れに係る計画表」の承認が必要です。
将来取得する資産を明確にすること
「施設拡充」など漠然としたものではなく。「~校舎新築」などのように明確にしましょう。
固定資産の取得予定額、毎年の積立計画を明確にすること
予定額と積立額は必ずしも一致しません(借入金を予定する場合があるためです。)
 
また、第2号基本金の組入れに係る計画表を作成時にも留意点がございます。
・所要見込額の記載
・組入れ計画年度 (対象固定資産取得年度の前年度までに完了予定になるように作成)
・計画変更(計画変更がある場合、理事会承認が行われ、変更内容を計画表に記載しているか)
これらに留意したうえで、計画表は、当該固定資産を取得するまで毎年作成し、独立した事業計画ごとに
作成する必要があります。
 
このように、第2号基本金の設定により、将来の取得資金の確保ができますが、設定には毎年の計画表の作成、理事会の承認など、必要な手続きがございますので、第2号基本金の設定をご検討されている法人様はぜひ注意をしていただきたく存じます。
 
東京事業部 塩井 祐里奈
 
 
教育・福祉事業