「知」の結集 ゆびすいコラム

2022.09.02

グループ通算制度の概要(メリット・デメリット)

1.概要
グループ通算制度とは、完全支配関係にある企業グループ内の各法人を納税単位として、各法人が個別に法人税額の計算及び申告を行い、その中で、損益通算等の調整を行う制度です。併せて、後発的に修更正事由が生じた場合には、原則として他の法人の税額計算に反映させない(遮断する)仕組みとされております。
 
2.メリット
①通算グループでの損益通算による納税額の減少(赤字の法人がある場合)
→通算グループ内で赤字が発生した際に利益が発生した法人の課税所得と相殺できるため納税額が少なくなります。
②非特定欠損金額の早期解消
→単体納税の場合、赤字のときは繰越欠損金額として残すことができますが、黒字が出ない限り、その繰越欠損金額は残り続けます。そして、10年経過するとその繰越欠損金額は、消滅してしまいます。
 一方で、グループ通算制度を利用すると他の所得通算法人への分配が可能となり、早期に非特定欠損金額を解消することができます。
 
3.デメリット
①中小企業の判定
→通算グループ内に大会社が1社でも存在すると、全社が大会社となり、中小企業の特例が使えなくなります。
②交際費等損金算入限度額の減少
→現在中小企業者等の場合、交際費等は各法人で800万円までが損金算入されるとなっておりますが、グループ通算制度を適用するとグループ全体で合計800万円までが損金算入となります。
③法人税の軽減税率(15%)適用可能金額の減少
→現在中小企業者等の場合、各法人それぞれ800万円までが、税率15%となっています。
 グループ通算制度を適用するとグループ全体で800万円までが15%となります。これにより、納税額が上がる可能性があります。
④グループ通算制度適用前に発生した繰越欠損金額の解消が遅くなる。
→グループ通算制度適用前に発生した欠損金額(特定欠損金額)は、特定欠損金額が発生した法人の所得金額を限度とし繰越控除行います。
 上記の所得金額は、損益通算後の所得金額をさします。したがって、特定欠損金額を保有している法人が黒字であったとしても、他の通算法人の赤字と相殺してから特定欠損金額を利用するため繰越欠損金の解消が遅くなります。
 
芦田
 
 
税 金