「知」の結集 ゆびすいコラム

2022.09.06

学校法人の理事長の役割

今回は、学校法人の理事長の役割について確認したいと思います。
 
【選任】
理事の中から寄附行為の定めに従って選任します(私立学校法第35条第2項)。
 ⇒通常は、理事会で選任
 
【職務】
理事長は、学校法人を代表し、その業務を総理します。(私立学校法第37条第1項)。
 ⇒意思決定機関はあくまで理事会
  日常業務については、業務分掌規程等に定めることで、理事会が理事長に意思決定を行う権限を委任することも可能。
 
【監事の専任】
監事は、評議員会の同意を得て、理事長が選任します。(私立学校法第38条第4項)。
 
【評議員会に対する決算等の報告】
理事長は、毎会計年度終了後二月以内に、決算及び事業の実績を評議員会に報告し、その意見を求めなければいけません(私立学校法第46条)。
 ⇒決算は理事会で審議・決定後、評議員会に報告。
  予算は予め評議員会の意見を聞いた後、理事会で決定。
 
 
ここまでが私立学校法での理事長に関する内容です。
 
次に、経理規程における理事長に関する部分について。
規程の内容は法人ごとに異なりますが、ここでは香川県が公表している「学校法人経理規程標準例」から抜粋しました。
 
【経理の責任者】
経理統括責任者は理事長とし、経理責任者は事務長とする。
 
【会計伝票の起票】
会計伝票は、所定の手続きにより起票者及び経理責任者が押印の上、証拠書類を添付して経理総括責任者の承認を得なければならない。
 ⇒前述の通り、経理統括責任者=理事長となる。
 
【支払事務】
振出小切手の作成は経理責任者がこれに当たり、小切手の署名又は押印は理事長がこれを行う。
 
【資金計画】
経理責任者は、資金業務を円滑に行うため、予算編成時及び必要に応じて随時に資金計画を作成し、理事長に提出しなければならない。
 
【金融機関との取引】
銀行その他金融機関との取引を開始又は廃止するときは、理事長の承認を得なければならない。
 
【有価証券の取得及び処分】
有価証券を取得又は売却するときは、理事長の承認を得なければならない。
 
【資金の借入れ及び貸付け】
短期資金の借入れを行う場合には、理事長の承認を得なければならない。
 ⇒長期資金の借入れについては、評議員会の意見を聞いた上で理事会の承認を得なければならない。
 
【固定資産の取得】
固定資産を取得しようとするときは、理事長の承認を得なければならない。
 
【固定資産の処分】
固定資産(重要な資産を除く。)の寄贈、売却、廃棄等の処分に当たっては、理事長の承認を得なければならない。
 ⇒重要な資産については、評議員会の意見を聞き、理事会にて承認を得なければならない。
 
【物品の購入】
物品を購入しようとするときは、理事長の承認を得なければならない。ただし、別に定める委任限度額未満のものについては、経理責任者の承認を得て購入することが出来る。
 ⇒物品とは固定資産以外のもので用品及び消耗品を指します。
 
【予算編成の基本方針】
予算編成の基本方針は、理事長が各予算責任者の意見を徴して作成し、理事会において決定する。
予算責任者は、予算積算資料を作成し、理事長に提出しなければならない。
 
【予算の決定】
理事長は、予算積算資料を検討の上、予算案を作成し、評議員会の意見を聴き、理事会での決定を経て、年度開始前までに予算を決定しなければならない。
 
【予算の配布】
予算が決定したときは、理事長は、各予算責任者に対してその執行に要する予算を配布するものとする。
 
【予算管理】
経理責任者は、予算の執行状況を常時把握し、これを毎月理事長に報告しなければならない。
 
【予算の遵守と流用】
経理責任者は、予算額を超える支出をしてはならない。ただし、やむを得ない事由が有るときは、同一部門の大科目内において理事長の承認を得て、他の科目から流用することが出来る。
 
【予算の補正】
理事長はやむを得ない事由により予算の追加その他の変更を必要とするときには、予算の補正を行うことができる。
 ⇒補正を行う際も評議員会の意見を聴き、理事会にて決定する。
 
【月次報告】
経理責任者は、別に定める様式により毎月末日の資金収支月計表を作成して速やかに理事長に提出するものとする。
 
【年度決算】
経理責任者は、毎会計年度終了後、速やかに決算に必要な整理を行い、次の各号計算書類を作成して理事長に提出しなければならない。
 ⇒計算書類の内容については割愛。
 
【決算の確定】
決算は、毎会計年度終了後2ヶ月以内に理事長において前述の計算書類とともに監事の監査を経て、評議員会に報告し、その意見を求めなければならない。
理事長は、計算書類を理事会に提出し、その承認を得るものとする。
 
【契約の承認】
競争により契約の相手方を決定したとき、又は随意契約の相手方を決定したときは、事前に理事長の承認を得て、契約を締結することとする。ただし、別に定める委任限度額未満のものについては、経理責任者の承認を得て締結することができる。
 
 
以上が経理規程の中で理事長が関連している項目となるのですが、その内容は多岐に渡る上に承認等の責任を伴うものがほとんどとなっております。
 
 
公益法人事業部 家永耕介
 
 

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