「知」の結集 ゆびすいコラム

2009.04.01

また新たな景気対策の減税案 今度は贈与税

麻生首相が新たな追加景気対策として、贈与税の減免を検討する考えを明かしました。

現在の冷え込んだ消費を拡大するためには、お金を持っている(貯めこんでいる)お年寄り世代のお金を市場に引っ張りだす、という目的においては、先日ご紹介しました「無利子非課税国債案」と似ていると考えられます。

現在の制度では贈与税の非課税枠は年110万円です。それを超える金額の贈与があれば、それがたとえ身内であっても贈与税が課税されます。

ですが、そもそも親が子に何かを買い与えてあげる場合、贈与税をはらうことは少ないのではないでしょうか。親が子供に車を買い与えて贈与税払ったということはほとんど聞いたことがありません。(もちろん厳密には納税すべきですが) 問題となるのは「家などの不動産」については金額が大きく、また法務局への登記情報などがあるおかげで課税漏れは比較的少ないかもしれません。でも現状としては相続税が課税されるような、お金持ち家庭は事実、贈与税に注意していますが、そうでない家庭は贈与税のことなど、現状でもほとんど意識していないでしょう、おそらく。

ということは、この制度が導入されたとしても、9割の家庭の「贈与の感覚」は今までとほぼ変わらず、一部のお金持ち家庭が恩恵を受けるのでは?実質的には。

また、麻生首相は「消費を条件」として基礎控除枠の拡大を発言していますが、こういった「条件」というものの存在が、えてして制度の活用がすすまない一つの要因となりえます。消費を拡大させたいのはわかりますが、個人的には無条件に贈与税の非課税枠を110万から500万に拡大させる、といったやり方のほうが結果的に贈与がすすみ、経済効果が得られるのではないか、と考えますがいかかでしょうか? (税理士:中芝康仁)